==ポイント==============================
・子どもとの交流は利用者のQOL向上につながる
・利用者との交流は子どもの発達に対しても良い影響を与える
・事業所内保育所を接点とした異業種・異事業所間の連携推進
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前回は、なぜいま介護業界で事業所内保育が注目されているかについて、事業所内保育の簡単な歴史を交えて解説しました。
今回は、実際に介護事業所に設置された保育園について解説していきます。
事業所内保育所を設置する場合、そのほとんどは介護施設に併設する形で設置されるので、自然と高齢者と園児を交流させようという取り組みが行われることがでてきます。
これらは幼老複合型(または一体型)施設と呼ばれ、全国的にも数が増加傾向にあります。
そういった幼老複合型施設で実施される利用者と子どもとの交流は、利用者の方に非常に喜ばれることは皆様もご存知のことと思います。
実際に保育施設と併設して頻繁に交流を行っているとある施設で実施されたアンケートによりますと、交流頻度の現状維持もしくは更なる向上を希望する高齢者は100%という結果になりました(下村美保・下村一彦(2008).少子高齢社会における世代間交流の意義と課題)。
高齢者の方は、やはり子どもが大好きなようです。
また、幼児の面倒を見ることが役割の創出につながるとの意見もあり、子どもとの頻繁な交流は、利用者のQOL向上や意欲増進にもつながるという、大きなメリットを生むようです。
利用者だけでなく園児にとっても、様々なメリットが生じるとの研究結果が有ります。
論文によると(村山 陽(2009).高齢者との交流が子どもに及ぼす影響)、高齢者との交流が子どもに及ぼす影響を研究し、結果、共感性の発達が促進されると結論づけています。
コミュニケーションスキルの向上につながるとの研究結果もあります(林谷啓美・本庄美香(2012).高齢者と子どもの日常交流に関する現状とあり方)。
他にも、こういった高齢者と子どもとの交流が頻繁におこなわれる施設は、文化や社会生活を身近に体験できる場として貢献しているとの意見もあります(林谷・本庄(2012))。
さて、事業所内保育所の設置は、利用者・園児(つまりはそこで働く職員の方にも!)両方にメリットがあることをご説明しましたが、実はこれ以外にも、事業面でのメリットも存在しています。
現在、介護・医療業界は人材不足の状況にあり、様々な事業所が福利厚生を充実させ、求人活動をより効果的に進めたいと考えています。
今後連携を密にしていく介護事業所や医療機関などに対し、もし単独で保育園を運営できない事業所であるならば、提携事業所内保育所として保育枠を貸し出すことで、より強い関係性を築いていくことができるようになります。
地域包括ケアシステムの構築が更に進んでいく中で、異業種・異事業所間の連携は必ず必要になってきます。
それを見越して、こういった布石を打つことにも活用できるのです。
今回は、介護事業所に事業所内保育所を併設することの効能についてお伝えしてきました。
次回は、実際に運営されている保育所ではどんなことが起き、どんな課題が発生しているかについて解説していきます。
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