6.台湾の介護施設における人材育成
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・海外人材に頼らない人材採用・教育体制(双連安養中心)
・外国人の就労、より体験を重視した教育に注力(祥寶老人養護中心)
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前回は、高齢者向け大規模入居施設「双連安養中心」における、
地域の高齢者に対して提供している特徴的なサービスについてお伝えしました。
今回は、こちらの施設と、2箇所目に視察に伺った
台北市内にある台湾最大級の私営入居系介護施設「祥寶老人養護中心」 におけるスタッフ・人材教育についてご紹介します。
★海外人材に頼らない人材採用・教育体制
まず双連安養中心での人材採用のシステムについてご紹介します。
ここでは新卒採用に力を入れており、提携している36か所の病院併設の大学から学生をボランティアとして受け入れ、
研修をおこない、そのボランティア活動をキャリアパスの最初の段階として位置づけています。
そして卒業後は施設に就職し、その後のキャリアに関しては就業年数で上昇していくようなシステムを採用していました。
介護人材不足は日本と共通ですが、介護・福祉に興味のある人材を学生のうちからボランティアとして施設に受け入れ、
実務的な教育と知識的な教育を並行して実施している点は、早期からの囲い込みという部分で有効であると感じます。
特に、入職後のキャリアパスの内容とそれにかかる期間を明確にしているという点は非常に先駆的でした。
★外国人の就労、より体験を重視した教育に注力
次に、祥寶老人養護中心における人材育成の特徴についてです。
こちらの施設では、双連安養中心とは逆に外国人の就労に力を入れていました。
現在は、ベトナムの方が多く就業しており、主に排泄介助と入浴介助などを行っているとのことでした。
待遇は月給で21,000台湾元となっており、これは月に170時間の場合の台湾の労働基準(最低賃金)に該当します。
就労人数の比率も、「台湾人:ベトナム人=1:1」にまでのぼります。
これは日本の介護事業所の近未来なのかもしれません。
言葉については、はじめからできているというケースはほとんどなく、業務を通じて徐々に学んでいくようです。
教育はOJTで、言葉を教えることと同時に介護の実務を教育していくという体制をとっていました。
海外人材登用や台湾人材の特徴なども踏まえ、より体験を重視した教育を行っている点が印象的でした。
日本においては座学を中心とした研修が多くなってしまいがちですが、今後の技能実習生や人材不足の状況を踏まえた
海外人材の採用を考えると、座学での教育では難しい部分が大きくなってくるでしょう。
様々な職員に対応できる教育という視点で、体験を重視するという考え方は非常に参考になるものでした。
どちらの施設も、人材確保・育成の仕方に全く異なったアプローチが見られました。
しかし、日本と同様に人材不足という課題を抱えている点は共通しています。
海外人材に頼らず、国内の学生に焦点を当て新卒採用に力を入れている双連安養中心、
一方で、海外人材の採用に注力し、より実践を重視した人材育成への取り組みを見せる祥寶老人養護中心は、
ともに日本の介護業界では珍しく、大変参考になりました。
次回は、台湾の施設における特徴のまとめについて、おさらいしていきます。